光の道

 

 



 

            真夜中。

                     長椅子に体を預けている人影が二つ。

            尚隆は陽子の体に手を回し、余ったもう一方の手で髪を弄ぶ。

            陽子は尚隆の好きなようにさせつつも、その顔は怒っていて、尚隆から背けている。

            ずっとその調子の陽子に尚隆は嘆息した。

           「陽子。何をそんなに怒っている?」

           「先ほど申し上げましたが?」

            先ほど―――こつこつと窓を叩く音に陽子が窓の鍵を開け、中に尚隆を入れてあげたそのときに、「こん

           な時間に来るのはやめてください」と。

           「俺は急に陽子に会いたくなったからこんな時間に来た。陽子はそれが不満だと言うのか?」

           「ええ、大不満です」

           「俺に会いたくなかったか・・・?」

           「そんなことは言っていません」

           「そう聞こえる」

           「違う!」

            むきになる陽子に気を良くしつつも尚隆は訪ねる。

           「では何が不満なのだ?」

           「こんな・・・真夜中に一人で来ることが」

           「一人ではいかんか?ならば六太でも・・・」

           「違います。心配しているんです!」

           「心配?」

           「こんな夜中にたとえ貴方でも一人で危ないでしょう?!いくら雲海の上が安全だとはいえ、暗闇じゃ何が

           起こるかわからないじゃないですか!!もし、もし尚隆になにかあったら・・・私は・・・」

           「陽子・・・」

           「私は尚隆が好きなんです。大切なんですよ・・・」

           「陽子、分かった。俺が悪かった」

           「分かってくださいましたか?」

            濡れた瞳で見上げてくる陽子にそっと手を滑らせる。

           「俺は危険なことは(極力)しない。ずっと陽子の側にいるさ。それにな、陽子」

           「なに?」

           「夜の雲海の上は暗闇じゃないぞ」

           「え?」

           「一見は百聞に如かず。見に行くか」

            いぶかしむ陽子を連れ去り、尚隆は雲海を目指す。








           「きれい・・・」

           「だろう?」

            二人の目の前に果てしなく広がる雲海。

           「光の道ね」

           「ああ」

            暗闇だと思っていた雲海には道があった。

            光の道。

            光―――月の光。

           「いつも玄英宮から金波宮まで続いている、道だ」



            だから。




           ―――いつでも会いに来る。
















          六花様、素敵な小説ありがとうございます!!
          最後の「月の光」とサイト名の「MOON SHINE」と掛けて頂いてとっても嬉しいですv
          頑張って更新しますので、これからもよろしくお願いします(ペコリ
 
          …ちなみに…、背景固定はちぃさんにやってもらいました(苦笑い)