雪月花 戴国編
「おや台輔、浮かない顔をしてどうされました?」
泰麒の傅相である正頼は隣の机に座っている小さな麒麟に話しかけた。
まだこちらの事がよく分からない泰麒はこうして正頼と勉学に励んでいるのだが麒麟といえども
泰麒はまだ子供、きっと飽きてしまったのだろう。
さっきから筆も止まっている。
「台輔はお疲れになってしまったのですね」
正頼が優しく微笑みながら言うと泰麒は慌てたように首を振る。
「違うよ正頼、少しは疲れてしまったけど…あのね今日の朝議でとうとう雪が降りはじめたって言っていたでしょう?」
「そうですねぇ、戴も本格的な冬がやってきました…それがどうかしましたか?」
「うん…それでね」
すまなさそうに泰麒は俯き、正頼は首を傾げる。
「僕…こちらにきてまだ雪を見たことがなくて、民の人たちがこれから大変なのは分かっているのだけど」
「なるほど…台輔は雪遊びがしたいのですね?」
図星なのだろうか、泰麒は再び俯き黙り込んでしまった。
白圭宮に入ってから泰麒はほとんど外に出た事がない。
雪が珍しい訳ではないのだが雪と聞く心弾んでしまう。
「ごめんなさい」
「よろしいのですよ台輔。では今日はここまでにして息抜きがてら、雪遊びでもなさいますか」
曇っていた表情がぱっと明るくなり思わず席をたつ。
「いいの!?」
「ただし今回だけですよ、次に雪遊びなんてしたら台輔も私も凍ってしまうくらいに寒くなってますからね」
後ろからパタパタと走ってくる音が驍宋の耳には届いた。
「蒿里、危ないから走ってはいけないと…」
振り向いたのはいいが、言葉に詰まってしまった。
泰麒が持っているものに視線を向けると泰麒は嬉しそうに笑う。
膝をつき、泰麒の目線に合わせるとじっくり見る。
「それは一体何だ?蒿里」
平らな板のようなものに白い、雪だろう、半月の形をした雪を乗せている。
赤い木の実と緑の葉を二つずつ左右に添えて、これはまるで。
「雪うさぎです」
「雪…うさぎ…?」
たしかにうさぎの形をしている、だが溶け始めているのか少し形が崩れていた。
「本当は雪だるまを驍宋様に見せて差し上げたかったのですが…大きくて」
残念そうに言う泰麒の顔を覗き込んだ。
「外に行ったのか?蒿里」
泰麒ははっとしてすぐにしゅんとした。
「ごめんなさい…」
落ち込む泰麒を見て驍宋は慌てて泰麒の頭を撫でる。
「責めている訳ではないのだ、蒿里。ただ…」
「ただ…」
不安そうに見つめる麒麟を王は安心させるように笑った、それも麒麟ごと抱えて。
「私も連れて行って欲しかったものだ。そうだ明日にでも、もう一度行ってみないか?」
不安な表情だった麒麟はすぐに顔を綻ばせると、すぐに聞き返す。
「本当ですか?」
「あぁ。雪だるまとやらを見せてくれ」
泰麒は嬉しそうに大きく頷いた。
fin
<柏野様コメント>
後書き:3万御礼ですv
前回と同じように季節ネタでvv
戴国初書き…!!
ここの主従は違う意味で書きやすかったです、泰麒マジック(何)
3万越えありがとうございました〜!
お好きなものをお持ち帰りくださいませ(´∇`)
<みー>
なんて可愛い泰麒v そしてあま〜い驍宋サマ!
極寒の地の暖かい話です。ゆきうさぎどころか雪だるま溶けそうです
柏野様のサイトで3万フリー小説をいただいてきました。
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